今回も大阪市のサイトからスタートしましょう。
これは「疑問・質問Q&A」のページへのリンクです。
その問1を見てみます。
「大阪市の一般財源のうち2000億円が大阪府の財源となり、特別区の住民サービスは低下するんじゃないの?」
これが問1の全文です。
そのまま転記しました。
これに対して、回答欄で「一般財源2,000億円が大阪府の財源となり」という質問のクダリについて否定するコメントはありません。大阪市の財源のうち2,000億円が「府」の財源になるという仕組みは否定しないわけです。つまり「府」の側からみれば、税収だけみても相当のメリットがあるわけです。
そして回答はこう言います。
- 特別区における住民サービスに係る財源は、事務分担に応じて配分されるため、住民サービスは維持されます。
- 特別区制度は、特別区と大阪府それぞれにふさわしい役割分担となるよう、徹底して仕事の仕分けを行った上で、それに応じて税などの財源を配分し、それぞれが担うべき事務を適切に実施していくこととなります
これも回答そのままの記載です。
さて、これを読んで、違和感を感じませんか?(感じない?)
つまり「配分する」とか、「ふさわしい」とか、「仕分けを行う」とか、「適切に実施」とか、誰がそれをするの?
誰が判断・評価するの?
新しくできる特別区の区長さんがするの?
違いますよね?
大阪府が「配分したり」、「ふさわしい」と判断したり、「仕分けを行ったり」、「適切に実施したり」するんですよね。「住民サービスが維持」されているかどうかの評価も大阪府がするんですよね。なので、いざ区民が「住民サービスが低下した」といっても、大阪府に「事務分担に応じて適正に税は配分されており、住民サービスは適切に実施されています」と言われれば、ハイそれまでよということになるのは目に見えているのです。
例えば、こんな感じです。
(あとでいいから上の記事読んでくださいね)
ということで、市民サービスに特化した特別区には何のイニシアチブもなく、結局、特別区の側では、大阪府から分配された少なくなった予算の中で、さらに切り詰めるための努力を強いられることになります。まあ、現状が既にそんな感じなのが悲しいですが、その悲しい現状(格差社会)が、いわゆる都構想の実現により、さらに加速されていくことになるのではないかと私は危惧しています。
さて、ここからが本題
コロナ以前から、大阪がインバウンドをメインにした観光事業に力を入れていることを否定する人はいないと思います。今回、住民投票を急いだ事情を鑑みれば、大阪府は、コロナ禍で落ち込んだ税収を埋めるため、都構想の実現によって増えた府の財源のうち相当額を万博とIR事業(カジノ)をはじめとするインバウンド事業に充てていくのでしょう。逆に言えば、万博・インバウンドに関連する団体・企業に金を回すために、今回あえてコロナ禍の中での住民投票を急いだのだともいえます。そして、当然、インバウンド事業の財源を増やせば、市民サービスの分担は減ります。すなわち、都構想の実現により、住民サービスが低下するのは必至というわけです。
例えれば、お父さんの事業の資金繰りために家計を犠牲にするようなものでしょう。そして、悲しいかな、大阪府(お父さん)が注ぎ込んだ府の事業は関連会社(お父さんの仲間内)を肥やすだけで、失敗に終わるでしょう。そして腹を空かせた子どもやお母さんは、お母さんがパートで稼いだなけなしのお金でどうにか生きていくしかないのでしょう。事業に失敗したお父さんは飲んだくれるか、トンズラきめるかのどちらかで、決して妻子には責任を取らないのです。
「自己責任を主張する者は、必ず自己の責任を転嫁する」ということです。
ということで、
最後にこれを貼っておきますのでご参照下さい。
「自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団」のまとめたサイトです。
つまり、いわゆるリベラル側ではなくとも、大阪の自民党の主流派は(維新は実質的には自民党のスガ派(仮称)ともいえる)、ずっと都構想には反対していたのです。今回、おそらくは国政で失政続きだったので、総選挙で、反自民の票を維新で拾いたいという各党の思惑がからみあって、自民・公明側は賛成に転じたのだというのが自分の分析です。
大阪全体がバーターに差し出されたというわけです。